影の境界線 - 異世界干渉編

08 -国王と手紙

「なんだなんだ〜?いつもより固い声だったなぁ?」

 緊張感なく、いつも通りのんびりした口調で戻ってきたその人は月光国の王。

 成人男性としてはとても小柄。
 童顔という言葉がとても似合う。
 黒い短髪で襟足や所々がツンツンと立っている。
 服装は膝辺りまでの黒い短パンに白い半袖シャツ。

 一見、少年のようにも見える容姿をしている。
 しかし実年齢は本人すら正確に把握出来ないほどの長命と前に聞いた。

 どれくらいの時間を生きているか解らないその王は、少々の事では驚かないし動じない。
 常に飄々としていて大変な事態に於いても余裕のある素振り。

 この王は見た目に合わない落ち着きと、見た目通りの少年っぽい素振りの両方を見せる。

 そういう所が各官僚も民も安心するのだろう。
 とても幼い感じを持っていながら「この王なら何とでもなる」と安心できる雰囲気を纏っている。

 かつて有名な恐怖政治をたった1人で終わらせ、この国の王となっただけあって民からの信頼はとても高い。気取らない言動も信頼を高めていた。

 帰ってきた王を見て声を聞き、私も何やらとても安心してしまったのだから恐怖政治に苦しめられていた民からの信頼が厚いのも当たり前よね。

「お早いお帰りで何よりです」
「クレアもタロウもやけに緊張してないか?」
「王の行動があの方の耳に入ってしまったみたいですよ」
「あの方?」
「はい、あの方です」

 簡単な会話の後、手紙を渡す。

 私は手に取っただけで紙に残る魔素と込められた怒りの気配から寒気がしたそれを、王は何も感じていないように受け取った。

 王は封書の裏面にある文字を見て

「あ〜…あいつか」

 と一言漏らし少しだけ考える風を見せ書簡を読み始めた。

 私達は王がそれを読み終え言葉を発するまでの間、黙って待っていることにする。待っている間、私は色々と考えてしまう。それは隣にいるタロウもまた同じみたいね。

 どれくらい時間が経過したかしら。
 そんなに長い時間ではないと思うけれど私は長時間に感じてしまう。

「ウザ…」

 読み終え最初に言った言葉がそれ。でも、焦ったり戸惑ったりする姿より私等は安堵した。

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