影の境界線 - 異世界干渉編

00 – 価値


 世の中には存在価値のない者がのうのうと生きている。

 例えば。

 有害物質を含む煙を出す嗜好品。
 他人の健康にも好ましくないから、その嗜好品を楽しめる場は限られる。
 しかし、その嗜好品を何時でも何処でも迷惑顧みず楽しみ有害な煙を垂れ流す屑が居る。

 例えば。

 安価で誰でも使える便利な乗り物。
 ある程度の危険を孕むものだから通行する側や乗り方が定められている。
 しかし、危険な逆走をし縦横無尽に走り事故が起きれば逃げるか被害者面する屑が居る。

 例えば。

 混み合った場の順番待ち。
 誰もが早く自分の先に行きたくても真っ当な者ならきちんと待つものだ。
 しかし、己さえ良ければ全て良しと考え割り込みをし注意されれば逆ギレする屑が居る。

 それらに存在する価値があると俺は思わない。

 他にも挙げればキリが無いくらいに屑共は多く、取り締まりが殆ど無いと言って差し障りない種の迷惑行為は真面目な者が損をして終わりだ。
 迷惑をかけた本人は「それくらい皆してる」「してやったり」「得した」「何か悪い事しましたか?」といった姿勢で世の中にあり続ける。

 更に言えばもっと重い犯罪をしても捕まらなければ裁きは下されない。

 捕まったとしても。
 年齢がどうの責任能力がどうの精神鑑定がどうの…と加害者の保護を重要視し、被害者は蔑ろだ。

 その他諸々。何せ不条理にできている。

 何故、そのような振る舞いができるのだろうか?

 この世界に生きる者の殆どは「死んだらそれで終わり」と思っていからだろう。
 「その後」を気にせず屑は「どんな悪事をしても裁かれなければ得をするだけ」とばかりに食って寝て他者を虐げ狡猾に私利私欲の人生を満喫する。

 しかしそれは違う。
 信じる信じないに関わらず、肉体の死は終わりではない。

 輪廻転生、なんて言えばスピリチュアル系だの宗教っぽいだのと胡散臭いものとして捉えられがちだが実際にある。

 けれども屑に輪廻転生なんてものは勿体ない話で、さっさと滅べば良いし苦しみ続ければ良い。

 生きているうちに裁かれなくても。
 この世でのうのうと逃げおおせても。

 俺はそいつらに罪の精算をさせる事が出来る。

 誰も気付かず、本人すら気付けず。
 それでもダメージがある形で裁いてやる。

 転生の輪は断ち切られ未来永劫、苦しみ続けるわけだ。

 …が、あまりの苦しさから謝罪をし始め「助けてくれ」だなんて図々しい言葉を吐き出すんだよなぁ。

 そもそも「たったそれくらい」なんだから定められた規則やルールを守っていれば良かった。

 「たったそれくらい」の簡単な事なのにな。

-影の境界線 - 異世界干渉編
-

執筆者:

関連記事

53 -砂漠の夜

影の境界線 -異世界干渉編- 53 -砂漠の夜  よくよく考えれば、この世界ですら宇宙の1つであり、恒星系の星は影響を与えている。その恒星を司る神の座に着けた者に信者が増え、力は増す。  傲慢になるの …

37 -神都での語らい

 戦意喪失している門番の生き残りを横目に門を通り、貧民街へ足を踏み入れた。  そこは予想していたより遥かに酷い街並みが広がっている。  建物はいつ倒れても不思議ではないボロ屋ばかり。  中には棒に布を …

26 -静かな戦い

 ここで力を使うのは極力避けたい。  この付近にハーララの刺客しかくや間諜スパイが潜んでいると決めつけられないものの、潜んでいる可能性はある。それに、自分が戦っている間にティールやドラリンが襲われれば …

43 -有翼の傀儡

影の境界線 -異世界干渉編- 43 -有翼の傀儡  神の命令はどんな事柄にも勝る。  言葉を疑いなく信じ命令を聞く。  神以外の全ての存在は皆、そうして生きるべきなのだ。  神によって与えられる身体へ …

27 -ハーララ国内にて

「只今、戻りました」  平伏し顔を上げず、玉座に座る王に伝える。  頭を下げる者を満足そうに見て王は言う。 「私が心より喜べる情報を持って来たか?」  頭を上げないまま微動びどうだにせず聞かれた事に答 …

自動販売機の水

短編小説「ヨルノコエ投稿作品シリーズ」この物語は「水」から始まった… » 続きを読む

kazari

カテゴリー

kazari


お問い合わせ

お問合せ