ヨルノコエ

セピア色の夢

とてもボロボロのアパート。

階段には踊場があるけど埃だらけ。
管理が行き届いていないんだ。

私はここに少し前から住んでいて。
空室も多いけど斜め上には住民が居る。

女の人で双子のお姉さんと住んで居るって。

しばらくしたある日。

また会ったから挨拶したよ。
会うのはいつも妹さんばかり。

2人で居るところは見たことないんだ。

案外、仲が悪いのかな…

あれから数ヶ月が過ぎた。
毎日のんびりした生活で悪くない。

昨日も双子の妹さんに会って話をした。

何気ない会話。
その話題には出さなかったけど…

最近、変な匂いがする。

管理人なんて居ないから相談できないし。

唯一、面識のある双子姉妹の部屋に
行って相談してみようって思ったの。

会った時に聞けば良かったな…

ピンポーン!

…無反応。 …留守?

ドアの横に窓があって少し開いている。
その隙間からあの嫌な臭いがしてる!

何かあった?!

ドアノブに手をかけたら…開いた。
開いてしまった!

私は「こんにちは~」と言いながら入る。

中は生活感があまりない質素な作り。
臭いは思ったほど強くない。

でも…臭う。

誰も居ないからもう、帰ろう。

そう思った時。
ベランダに不自然なものを見ちゃった。

冷蔵庫。

古めかしい冷蔵庫。

隙間から茶色い汁が垂れてる…

生ゴミ放置?
そう思って後先考えず開ける。

…お姉さん?…かな…

変わり果てた姿で腐ってる。

私は逃げ出した。
一目散にドアに向かって。
自分の部屋のドアに鍵をかけた。

そして、落ち着いて考えてみる。

あの死体はかなり、腐ってる。

妹さんは腐った死体を知っている。
知ってて普通の生活を送ってる!

部屋から出るのが怖くなった。

でも……

ピンポーン…

「こんにちは~居る~?」

ピンポーン!

「さっき部屋に入るとこ見たよ~」

明るい声。
何もない、明るい声が返って怖い。

ドアを開けずに答えた。

「何」

「ちょっと話がしたくて~」

「このまま聞くよ?」

「開けてくれないの?」

しばらくの沈黙。

「ドアなんてあっても無いものなのに」

ドアは開いた。
開いた、というか消えた。

「あれ、見ちゃったんでしょ?
気にしなくて良いんだよ、あれは。
確かに寂しいけど仕方な……」

私は怖かった。

最後まで聞きたくない。
近くにあったロープで首を絞めた。

「や…めて…もう少し……うま……」

妹さんは動かなくなった。
ダラリと力なく倒れる。

その時だ。

天井が開いて大きな手が私を掴んだ!

なんだここは!
化け物がいる世界なのか?

「残念ですが1人は死産。
もう1人も首がヘソの緒で絞まって…」

その声を聞きながら、私は暖かいきれいな部屋に移される。

-ヨルノコエ
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