ヨルノコエ

トロッと濃厚脂スープ

…悪趣味極まりない飲み物だと思う。

口に含むと液体の脂そのものだ。
スープ、となっている通り味はある。

安いコンソメ風の味。
水分が無く液体の脂を啜る感覚。

凄まじいカロリーがありそうだ。

南極だか北極だか探索するには脂を大量に摂取するそうだ。そういう特殊なものであれば納得もできる。

しかしこれは普通に売られていた。
茶色1色の地味な自動販売機にあった。

メーカーは…752なのだろうか?
自動販売機側面に白文字で書かれていた。

数字を言葉にする読み方もある。

もしかしたら「ナゴニ」とか読むのかも知れないが聞いたことのない名だ。

何故、こんなものを買ったか?

これしか味のありそうな品が無かった。

「青汁ピーマン味」は売り切れ。
…これはこれで悪趣味だな。

残りは何故か「水」しかない。

俺は水をわざわざ買う意味が解らん。

日本は水道水が普通に飲める国。何故わざわざ割高の水を買わねばならんのだ?

そしたらこのスープしか無かった。

せいぜい、コッテリしたラーメンスープくらいの味かと思ったが予想以上に脂そのものだったというわけだ。

半分飲むが限界で残りは捨てた。
排水溝に中身を流してやった!
缶も腹立たしいからポイ捨てした。

…何故か持ちたくなかったんだ。

脂身がドアップで印刷されているような黄っぽい白と細かい 血管の柄。

そこに商品名と小さく書かれた文字。
「最後までご堪能ください」

何か気持ち悪い。

あのスープのせいか帰宅しても胃の辺りがムカムカする。酷い胸焼けだ。

胃薬飲んでさっさと寝よう。

そう思い、万年煎餅布団で横になった。

「!!!」

俺の枕元に…ある。

今日、捨てたはずの缶。
不気味な柄のあの缶が置かれている。

恐る恐る持ち上げる。
捨てたはずの中身が半分くらいある。

何なんだ?!

捨てたのが幻覚で実は捨てずに持ち帰ったのだろう。そう、思う事にした。

寝ると嫌な夢を見た。

貧乏そうな小太りのオッサンが出てきて俺に話しかけてくる夢。

「私がこの世に残した最後の私の一部を大切にしてくれよ。捨てるなよ」

そんな事を言われた。

…気持ち悪い。

目覚めてつい、見てしまった。
気持ち悪い脂スープの原材料。

「脂身(人)」

それを見て何かを納得してしまった…

-ヨルノコエ
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